ルート系

前述の通り、まずは数学を思い出していくことを考えます。個人的に一番思い出しやすそうな、リー代数から始めることにします。

有限次元半単純リー代数を生成元と関係式で記述する方法を思い出すことを、最初の目標とします。これは Introduction to Lie Algebras and Representation Theory (Graduate Texts in Mathematics) の Chapter 18 の内容です。

ひとまず、関連事項を整理します。ルート系(root system)の定義から。


V を有限次元ユークリッド空間(すなわち、体 \mathbb{R} 上の有限次元ベクトル空間で、内積が定義されている)とします。内積\langle \cdot | \cdot \rangle と書くことにします。

ルート系の定義を述べる準備として、鏡映について述べます。

V の部分空間 P が超平面(hyperplane)とは、\dim P = \dim V - 1 を満たすことです。超平面 P に関する鏡映(reflection)とは、V = P \oplus A と直和分解したとき、線型変換 \sigma : \pi + \alpha \mapsto \pi - \alpha\pi \in P, \alpha \in A)のことです。

\alpha(\neq 0) \in V について、超平面 P_\alpha\{\xi \in V | \langle \xi | \alpha \rangle = 0 \} と定義し、鏡映 \sigma_\alphaP_\alpha に関する鏡映として定義します。簡単な計算で、\sigma_\alpha(\xi) = \xi - c(\xi, \alpha) \alpha(ただし、c(\xi, \eta) := 2 \langle \xi | \eta \rangle / \langle \eta | \eta \rangle)が分かります。

準備ができたので、定義を述べます。

V の部分集合 \Delta がルート系(root system)であるとは、次を満たすことです。

  • (R1) \Delta0 を含まない有限集合で、V を張る。
  • (R2) \alpha \in \Delta について、k\alpha \in \Delta \Longleftrightarrow k = \pm 1
  • (R3) \alpha \in \Delta について、\sigma_\alpha(\Delta) = \Delta
  • (R4) \alpha, \beta \in \Delta について、c(\alpha, \beta) \in \mathbb{Z}

なぜこのような集合を考えるかといえば、リー代数のルート集合がこの条件を満たすからです。さらに実は、任意のルート系について対応するリー代数が存在することも示されます。