普遍包絡環(その1)

リー代数にはいわゆる普通の積がありません。しかし、普通の積を考えた方が便利な場合もあります。そこで、リー代数を自然に拡張したような、うまい結合代数を構成することにします。

それが、普遍包絡環(universal enveloping algebra)と呼ばれるものです。


\mathcal{G}リー代数V\mathcal{G} 加群とすると、次が成り立ちました(定義の条件の1つでした)。

  • [x,y]v = xyv - yxvx,y \in \mathcal{G}v \in V

この式をぱっと見ると、xy というものが v に作用しているような気もします。実際には xy というものは \mathcal{G} には存在しませんし、xyvx.(y.v) という意味しか持たないのですが。

といっても、表現の言葉を使えば(表現を \pi とすると)、xyv\pi(x)\pi(y)v となります。こういう形で見ると、\pi(x)\pi(y) というものはあります(この場合の積は、リー代数ではなく、結合代数 \text{End}(V) 上の積です)。そう考えると、xy というものの存在を認めてやってもいいような気がしてきます。

これを認めてやるには、テンソル積を考えればうまくいきます。もちろん、単純にテンソル積だけではだめですが、[x,y] = xy - yx という関係式を入れてやれば良いです。具体的な記述は次回に。