代数多様体は有限個の既約成分に分解可能で、その分解のしかたは既約成分数が最小の場合を考えれば一意です。都合のよい性質ですが、代数多様体が多項式と結びついていることを考えれば、そのくらいの性質は成り立って当たり前のような気もします。
そのあたりの気分をもう少し具体的にするため、定義イデアルという概念を導入します。
代数多様体のすべての点 x で f(x) = 0 を満たす多項式 f の集合を考えます。これは、多項式環のイデアルになります。このイデアルを、代数多様体の定義イデアルと呼びます。
代数多様体とその定義イデアルは1対1対応するわけではありません。しかし、定義イデアルを使えば、代数多様体の議論を多項式環のイデアルの議論に持って行くことは可能です。
多項式環だと、任意のイデアルは有限生成です(ヒルベルトの基底定理)。そのことから、代数多様体が有限既約分解できることは結びつきそうだという気分が出てきて、なんとなく納得できます。ここまでくれば厳密な証明も難しくありません。