「数学ガール/フェルマーの最終定理」感想 (2)

だいぶ間があきましたが、感想の続き。

この本は、フェルマーの最終定理というサブタイトルがついています。しかし実際には、フェルマーの最終定理は最後の章に出てくるだけです。楕円関数と保型形式が一応出てくるものの、それほど深く踏み込んではいません。

数学の読み物は、初等的なところを丁寧にやって、ある程度進んだところで急にペースを上げる、というパターンが多いように感じます。このパターンでは、「そろそろ面白くなりそうだ」というあたりで突然話が飛ばされる印象があって、あまり好きではありません。数学ガールもこのパターンに多少あてはまるような感じがしたのは、ちょっと残念な点でした。

ただ、フェルマーの最終定理に関して、単に受け身で眺めるだけの姿勢でないところは良いと思います。難しい内容に対しても、「なんとか少しでも触れてみよう」と試みているのは、数学ガールならではと思います。

ところで、フェルマーの最終定理といえば、学生時代のことを思い出します。僕が数学科にいた当時、フェルマーの最終定理がブームになったことがありました。そのとき、数学科以外のある人に言われたこと。

「整数の問題を解くのに複素数を使うなんておかしい」

いや、おかしくなんかないんだよ、ということを何とか説明しようとしましたが、うまくできませんでした。今でも、ちょっと自信がないかな・・・。

この本を渡したら、「整数の問題を解くのに複素数を使うこと」が決しておかしなことではないと納得してもらえるでしょうか。