前回、ルート系の定義を確認しました。今回はルート系の底(base)の定義をみます。
今考えているのはベクトル空間なので、基底を考えたいというのが自然な発想です。ただ、ルート系は単なる部分集合であって部分空間ではないので、ルート系の基底というものはありません。しかし、基底に近いものはあります。
をユークリッド空間 のルート系とします。
が の底(base)であるとは、次を満たすことです。
- (B1) は の基底。
- (B2) について、 と表したとき、 は全て 0 以上の整数になるか、全て 0 以下の整数になるか、いずれかが成り立つ。
(B2) の条件がちょっと変わった条件です。これによって、ルート(ルート系の元)は、正のルート(positive root)と負のルート(negative root)に分けることができます。これがルート系を使う上で重要な点です。
任意のルート系に底が存在するかどうか(つまり、(B2) を満たすような都合の良いものがあるかどうか)は、定義からは明らかではありません。しかし、内積を使った少しの議論で、存在することは示すことができます。
底は一意に存在するわけではありません(それは、例えばルート系の対称性を考えても当たり前)。しかし、底同士は、内積を保つ(角度を保つ)線型同型変換でうつりあうことが分かります。この議論は次回みていきたいと思います。