sl(2) の表現(前編)

ここで、具体的なリー代数を対象に見ていきたいと思います。といっても、特殊なものを見るわけではありません。

sl(2) は、全てのリー代数の基本となる構造であり、理論の基盤となるものです。


\mathcal{sl}(2) は次で定まるリー代数です。

  • \mathbb{C} 上の 3 次元ベクトル空間です。
  • 基底 x, y, h の間の括弧積が次で与えられます。
    • [x,y] = h
    • [h,x] = 2x
    • [h,y] = -2y

これは、実は A_1 型のリー代数です。

このとき、括弧積の定義から ad(h) は半単純、ad(x)ad(y) は巾零です。したがって、カルタン部分代数 Hh で張られる 1 次元部分代数です。

V を有限次元の \mathcal{sl}(2) 加群とします。前回定義したウェイト \lambda : H \to \mathbb{C} を考えます。今回は H が 1 次元なので、\lambda を単なるスカラーと思っても構いません。

このとき、次が成り立ちます。

v \in V_\lambda ならば、x.v \in V_{\lambda + 2}y.v \in V_{\lambda - 2} となる。

これは、実際 h を作用させればすぐ分かります。

いま V は有限次元なので、V_\lambda \neq 0V_{\lambda + 2} = 0 となる \lambda がとれます。v_0 \in V_\lambda を1つ取り、v_i := \frac{1}{i!} y^i.v_0i \geq 0)と定義します。このとき、上記のことから v_i \in V_{\lambda - 2i} です。

このとき、i \geq 0 について次が成り立ちます(ただし、便宜上 v_{-1} := 0 と定義しておきます)。

  • (a) y.v_i = (i + 1) v_{i + 1}
  • (b) h.v_i = (\lambda - 2i) v_i
  • (c) x.v_i = (\lambda - (i - 1)) v_{i - 1}

これも、実際に計算してみればすぐ分かります。

V は有限次元なので、v_0 , \cdots , v_m \neq 0v_{m + 1} = 0 となる m が存在します。(a) より v_{m + 1} , v_{m + 2} , \cdots = 0 です。(c) より x.v_{m + 1} = (\lambda - m)v_m ですから、\lambda = m です。

(a)、(b)、(c) から、\{v_i\} で張られる m + 1 次元の部分空間 V'V の部分加群となる、ということが言えます。

ここまでくれば、\mathcal{sl}(2) の表現を明らかにするまであと一歩ですが、ちょっと長くなってきたので次回に続きます。