sl(2) の表現(前編)
ここで、具体的なリー代数を対象に見ていきたいと思います。といっても、特殊なものを見るわけではありません。
sl(2) は、全てのリー代数の基本となる構造であり、理論の基盤となるものです。
は次で定まるリー代数です。
- 上の 3 次元ベクトル空間です。
- 基底 , , の間の括弧積が次で与えられます。
これは、実は 型のリー代数です。
このとき、括弧積の定義から は半単純、 と は巾零です。したがって、カルタン部分代数 は で張られる 1 次元部分代数です。
を有限次元の 加群とします。前回定義したウェイト : を考えます。今回は が 1 次元なので、 を単なるスカラーと思っても構いません。
このとき、次が成り立ちます。
ならば、、 となる。
これは、実際 を作用させればすぐ分かります。
いま は有限次元なので、、 となる がとれます。 を1つ取り、()と定義します。このとき、上記のことから です。
このとき、 について次が成り立ちます(ただし、便宜上 と定義しておきます)。
- (a)
- (b)
- (c)
これも、実際に計算してみればすぐ分かります。
は有限次元なので、、 となる が存在します。(a) より です。(c) より ですから、 です。
(a)、(b)、(c) から、 で張られる 次元の部分空間 は の部分加群となる、ということが言えます。
ここまでくれば、 の表現を明らかにするまであと一歩ですが、ちょっと長くなってきたので次回に続きます。