普遍包絡環(その2)

前回述べた普遍包絡環について、具体的な記述を書きます。そして、リー代数の表現の代わりに普遍包絡環の表現を考えても同じであることを述べます。

普遍包絡環(その1)

リー代数にはいわゆる普通の積がありません。しかし、普通の積を考えた方が便利な場合もあります。そこで、リー代数を自然に拡張したような、うまい結合代数を構成することにします。それが、普遍包絡環(universal enveloping algebra)と呼ばれるものです。

次回の内容予告

基本的な路線としては、リー代数の表現論のはなしを進めたいと思っています。しかし、その前にリー代数の知識がもう少し必要そうですので、その整理をまず行う予定です。次回は、まずリー代数の普遍包絡環(universal enveloping algebra)の話を書こうと思…

sl(2) の表現(後編)

sl(2) の表現(前編)では、sl(2) 加群のある部分加群を構成しました。今回はその続きです。

sl(2) の表現(前編)

ここで、具体的なリー代数を対象に見ていきたいと思います。といっても、特殊なものを見るわけではありません。sl(2) は、全てのリー代数の基本となる構造であり、理論の基盤となるものです。

リー代数のウェイト

しばらく、リー代数のウェイトについて見たいと思います。 まずは定義を確認します。

有限次元単純リー代数の分類

有限次元単純リー代数は、ディンキン図形によって全て洗い出すことができます。その流れを整理しておきます。

リー代数のルート

半単純リー代数は、カルタン部分代数を軸に、ルート空間分解という直和分解が可能です。この分解がリー代数の構造を見通し良く表します。

カルタン部分代数

最初に、ルート系を抽象的に導入しました。ここで、リー代数のルートとは何かを振り返っておきます。その前提として、カルタン部分代数を見ます。

ディンキン図形の思い出

別のブログでも書きましたが、学生だったときのこと。大学の数学科に入ったはいいものの、微分積分や線型代数が嫌いで、今ひとつ目標を見失っていた時期がありました。当時は、大学に入ったら今まで知らなかったような新しい数学と巡り会えると、漠然と思っ…

ディンキン図形

カルタン行列の本質を図形に置き換えたものがディンキン図形です。議論にディンキン図形を使うと、可能なルート系を全て洗い出すことが容易になります。そして、実はルート系はそれほど種類が多くないことが分かります。

カルタン行列

ルート系の同型の定義が前回ありました。実は、2つのルート系が同型であるためには、それぞれのルート系の底同士についてだけ一定の条件を満たせば良いです。ルート系の底から定義されるカルタン行列が、ルート系の同型を与えます。

ワイル群

前回、ルート系の底を考えましたが、底同士の関連の議論を残していました。底同士は、実はワイル群の元(線型同型変換の1つ)でうつりあいます。その証明のあらすじを書こうかと思っていましたが、省略して結果だけにしておきます。

ルート系の底

前回、ルート系の定義を確認しました。今回はルート系の底(base)の定義をみます。今考えているのはベクトル空間なので、基底を考えたいというのが自然な発想です。ただ、ルート系は単なる部分集合であって部分空間ではないので、ルート系の基底というもの…

ルート系

前述の通り、まずは数学を思い出していくことを考えます。個人的に一番思い出しやすそうな、リー代数から始めることにします。有限次元半単純リー代数を生成元と関係式で記述する方法を思い出すことを、最初の目標とします。これは Introduction to Lie Alge…